連載コラム「遺伝子組換え食品 前編」
第7回 「遺伝子組換え表示が変わった」
連載コラム第7回目では「遺伝子組換え食品」についてお話いたします。
2023年4月1日、「遺伝子組換え表示」に関する法改正がありました。法改正の内容、表示の変更点等を前編、後編に分けて見ていきましょう。
前編では
1)法改正による「遺伝子組換え表示」の変更点
2)(遺伝子組換え表示に深く関わる)「非遺伝子組換え農産物」 の流通管理方法について見ていきたいと思います。
1)遺伝子組換え表示は法改正によって何が変わったの?
我が国の遺伝子組換え表示制度の対象となる食品は、9農産物(★)と、それらを原料とする33食品群です(2022年3月現在)。今回、「大豆、とうもろこし」に関わる法改正が行われました。変更点は以下の通りです(※1-3)
★大豆、とうもろこし、ばれいしょ、菜種、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤ、からしな
法改正の変更点
大豆、とうもろこしもの“遺伝子組換えでない”と表示できる条件が変わった
法改正前:遺伝子組換え農産物の混入が5%以下
⇒法改正後:遺伝子組換え農作物の混入が無いこと。
2)「遺伝子組換え表示」に深く関わる「非遺伝子組換え農産物」の流通管理方法
遺伝子組換え表示と農産物の流通方法がどのように関係するのでしょうか?その謎を解くカギは”非遺伝子組換え農産物“の特別な流通管理方法にあります。それでは見ていきましょう。
図1 農作物(とうもろこしや大豆)の流通経路(米国~日本)(※4)
図1のように、「非遺伝子組換え農産物」と「遺伝子組換え農産物」は、同じように流通されています。しかし「非遺伝子組換え農産物」は “遺伝子組換え農産物の混入を防止”するため、特別に管理する必要があります。特別な管理方法について見ていきましょう。
種は非遺伝子組換え(証明書付)を使用。専用の畑を使用。 専用の器具、設備を使用して収穫。
専用の運搬用のトラック、農産物保管用のサイロを使用。 もし遺伝子組換え農産物に使用した場合、予めクリーニングが必要。
船への搬入出設備(コンベア類)や船倉(貨物の個室)は専用利用。 もし遺伝子組換え農産物に使用した場合、予めクリーニングが必要。
工程毎に「非遺伝子組換え農産物」と「遺伝子組換え農産物」を分けて適切に管理したことを示す記録、証明書を発行。
図2のように、非遺伝子組換え農産物は“専用の設備”の使用、適切に管理された証明書が発行される等、特別に管理されます。そのため大変な手間とコストが掛かります。 そしてこの特別な流通管理の実施が“遺伝子組換えでない”の表示に必要な条件なのです。
青いバラは自然界に存在せず、自然交配や品種改良でも実現できず、その花言葉には“不可能”という意味がありました。
しかし14年の歳月を掛け、酒造メーカー「サントリー」等が開発に成功。
元々、青い色素を 作る遺伝子を持たないバラに「青い色素を作り出す遺伝子」を組み込み、青いバラを咲かせることに成功(※5)。
“現在、青いバラの花言葉は”夢かなう“と改められ、花言葉を変える大発明に「遺伝子組換え技術」が大きく貢献していたわけです”。
開発された青いバラは紫色に近い青色です(サントリーwebサイトhttps://www.suntorybluerose.com参照)。
これまで販売されていた青いバラ(右写真)は茎から染色液吸収させて着色しており、価格は開発品の方が数倍以上高価だそうです。
- ※1 内閣府令第二十四号(食品表示法(平成二十五年法律第七十号)第四条第一項の 規定に基づく食品表示基準の一部を改正について)(2019年)
- ※2 知っていますか?遺伝子組換え表示制度(消費者庁)(2022年)
- ※3 新たな遺伝子組換え表示制度について(消費者庁食品表示規格課)(2021年)
- ※4 アメリカ及びカナダ産のバルク輸送非遺伝子組換え原料(大豆、とうもろこし)確保のための流通マニュアル(財団法人食品産業センター)(2001年)
- ※5 開発ストーリー「世界発 青いバラへの挑戦」(サントリー)