連載コラム「食物アレルゲン編」
第5回 「食物アレルギー表示制度ができた訳」
連載コラム第5回では「食物アレルゲン」を取り上げたいと思います。食物アレルギー患者さんは年々増加(※1)していることから、食物アレルギー表示制度の正しい理解と、適切な運用が食品業界全体に求められています。今回は「食物アレルギー表示制度ができた訳」を話題として取り上げたいと思います。
「食物アレルギー表示制度ができた訳は?」
「食物アレルギー」は重篤な場合、アナフィラキシーショックと呼ばれる血圧低下や呼吸困難等の状態を引き起こし、時には死に至ります。
食品による健康危害の発生を防止の観点から、当時の厚生省が「食物アレルギー表示」の制度化を推進していきます。また、欧米諸国でも食物アレルギー表示の法制化の動きがあったことも、我が国の法制化を加速させた要因の1つです。
それでは「食物アレルギー制度」の創設から現在までの流れを時系列で見ていきましょう。
1996年 | 食物アレルギー対策検討委員会発足(当時の厚生省) 「食物アレルギーの発症年齢や原因物質などの実態調査実施」 |
1998年 | 食物アレルギーによる健康被害の実態調査(大規模調査) 「食物アレルギー原因物質は、卵が最も多く、次いで、牛乳、小麦、魚類、そば、エビ、果物、落花生の順であった」 |
2000年 | 食物アレルギーを含む食品に表示を義務化することが適当、との結論が出される。 |
2001年 | 食物アレルギー表示制度創設(食品衛生法による義務化) 卵、牛乳、小麦、そば、落花生の5品目が表示義務化 |
2008年 | 表示義務化対象に「エビ」、「カニ」追加。 |
2015年 | 食物アレルゲン表示の管轄が、従来の食品衛生法(厚生労働省)から食品表示法(消費者庁)へ移行。 |
2022年現在 | 食物アレルギー表示義務化項目7項目
食物アレルギー表示推奨項目21項目 |
現在、「くるみ」の表示義務化の動きが出ています。経緯として、2021年に食物アレルギーの原因物質を調査した結果、「卵」、「乳」に続き、「木の実」が3番目に多く、「木の実」のアレルギー症例の中でも、「くるみ」が特に多いことが確認されたためです(※2)。
既に法改正に向けた議論がなされており、近々、「くるみ」は表示義務化される見通しです。
既に法改正に向けた議論がなされており、近々、「くるみ」は表示義務化される見通しです。
第5回の連載コラムでは「食物アレルゲン」に関する話題から、「食物アレルギー表示制度ができた訳」について取り上げました。いまやアレルギーは国民病と言われ、我が国でも2-3人に1人が何らかのアレルギー疾患を持っているとされています。その中でも、食物アレルギーは死亡例があるほどの重大な問題です。食物アレルギー表示が法制化されてから20年余りが経過しますが、いまだに、食品表示ミスによる、誤食事例の発生が報告されています(※1)。そこで、第6回の連載コラムでは「アレルギー患者さんの生の声」を取り上げ、「食物アレルゲン表示に関して食品事業者に求められていること」についてお話したいと思います。
(出典)
- ※1 食物アレルギー表示制度に関する実態調査業務 調査報告書(消費者庁)(2022年)
- ※2 内閣府消費者委員会事務局 消費者委員会 食品表示部会第67回 議事録 (2022年)