連載コラム「農薬編」

第4回「なぜ農薬を使うのか?」

第3回目のコラム「農薬の光と影」では、農薬の適切な使用が食料の安定供給に寄与する一方、過剰使用によって”春になっても鳥が鳴かない”事態を招いたことをお話しました。第4回目では、農薬が使用される場面や目的を、例を挙げてお話したいと思います。

「植物の病気って何??」

植物も私たちヒトと同じく病気に掛かります。代表的な病気に「うどんこ病」、「べと病」などがあり、原因は「カビに感染するため」です。では、どのような病気かを写真で実際に確認してみましょう。

うどんこ病
うどんこ病にかかった「アジサイ」
べと病
べと病にかかった「キュウリ」

左側は「うどんこ病」に掛かったアジサイの葉です。葉の表面にうどん粉(小麦粉)をまぶしたように見えることから名付けられました。 右側は「べと病」にかかったきゅうりの葉です。外観では分かりませんが「べと病」にかかった植物の葉が「べとべと」になることから名付けられました。 何れの病気も重症化すると、「生育が悪くなる」、「花が咲かない」、「実が大きくならない」等の深刻な影響が出るため、予防や治療が必要です。ここで登場するのが“農薬”なのです。

農薬は植物の病気の治療薬

植物の病気の治療薬

植物の「うどんこ病」、「べと病」の予防や治療に対して、重曹や酢が使われることもありますが、効果の高い”殺菌剤“と呼ばれる農薬が使用されます。医薬品に「1日〇錠ずつ、朝夕の食後に服用」など服用するタイミング、量、回数が定められているのと同じく、農薬にも使用時の濃度(希釈率)、使用回数等の注意事項があり、法律で定められており、遵守する必要があります。 これを守らない場合、収穫後に残留基準を超える量の農薬が農作物に残留した、という事態が発生しているのです。

(こぼれ話)
担当者「分析装置の声に耳を傾けよう」
分析技術者の仕事は、お客様からご依頼頂いた分析サンプルを、適切な前処理(大雑把な言い方ですが、料理の”あく抜き工程”にあたり、丁寧に行わないと分析値に大きく影響します!!)の後に、分析装置を使って目的成分の量を数値化します。
しかし、正確な分析値を得続けるためには、常に“分析装置のお手入れやメンテナンス”が必要なのです。

(ある日の分析装置の心の声)
分:「(おーい、今日は少し体調が悪いから分析したくないよー)」
私:「あれ、今日は分析値が安定しないなあ・・・なんでだろう」
分:「(そりゃあそうだよ、部品がすり減ってるんだもん。送液が微妙に安定しないの気づかないの??) 」
  「(あ、あとね、僕、最近、真空ポンプのオイル換えてもらってないから ドロドロ血になりかけてるんだよね。そろそろ換えないと壊れるよ)」

 ・・・ 

何てやりとりが実際にあると思うんです。分析装置もヒトと同じで、大事にしてもらえないと「動きたくない」、「気分が乗らない」ことを、最初は小声で訴えかけてきます。しかし僅かな不調のサインを見逃し続けると、ある日突然、故障して動かなくなる事態になるかもしれません。従って、分析装置が不調を訴える声が小さいうちに気付き、トラブルの芽を摘み取ることも分析技術者の大切な仕事の一つなのです。分析装置と良好な関係を築く第一歩として、分析装置の仕組みを十分に理解する、調子の良い時の状態(音、におい、見た目)を自分自身の身体に染み込ませると共に、よーく耳を澄まして、分析装置の声を聞いてあげることが大切だと思います。

第4回目のコラムでは、「農薬の用途」についてお話しました。ベストなのは、農薬などの化学薬品を使用しないことですが、残念ながら我が国では「無農薬栽培」は定着していません。この理由として、我が国には「梅雨」があり、比較的雨が多く、高温多湿なことから作物の病気の原因となるカビが繁殖しやすく、病害虫の活動が活発になり、雑草が生えやすくなります。このため、どうしても農薬の使用量が増加するのです。従って“現状の農産物の市場価格の維持”、“現状の食生活を変えない”という選択をするのであれば、私たち消費者も農薬と共存するために正しい知識を持っておく必要があります。インターネット上に大量にあふれる農薬に関する情報の取捨選択を適切に行うことも重要だと思います。なお、新たな潮流として、農業にもSDGsの取り組みがみられており「減農薬栽培(使用する農薬量を従来の50%以下に抑える栽培方法)」という選択肢も現れています。このテーマは別の機会にお話ししたいと思います。

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